6.一人の方の紹介が13件もあった「信頼」。
 高槻市の西にあり、茨木市との境になる赤大路町。国道171号線とJR東海道線の摂津富田駅の間に位置する町。駅までの距離は徒歩圏内にはいる。名神高速道路の茨木インターチェンジが車を利用して約5分の距離にあり、生活と仕事にたいへん便利なところ。

 昭和58年何月の何日、その町の賃貸住宅に住む方から住宅の下見依頼があり、最初のきっかけとなる。数件の家を案内して、気に入ってくれた住宅が見つかり、私の仲介で購入してもらうことになった。

 働き者のご夫婦と5歳になる娘さんの3人家族。四国から大阪に来て建設関係の仕事を頑張り、住宅を購入するための資金を十分に蓄え、念願の家を購入することになった。私も引っ越し祝いによばれて、よく飲んだことを思い出す。四国より父親や親戚の人たちを招待して、努力したおかげで住宅を持つことができたことで、喜びを多くの人達と共有していた。20年前の、私が満37歳のとき、不動産の仲介営業をして2年目のころだった。

 それから数年がたって、その方から連絡が入り、家のことで相談したいといわれて訪問する。
近所に引越しする予定の人がいる。その家を買うことができるものなら買いたい、との話であった。ありがたく依頼されることになり、よろこんで仕事を始めた。

 引越し予定の人と掛け合うことになる。売る意思があるかどうか、売る気があれば相手方はどなたでも良いか、最初の大きなポイント。近くに移転することになっているので、近所付き合いの良し悪しや、気があうかどうか、過去にいさかいがなかったか、それに、好き嫌いなどの、いたって日常的で感情的なことがらが結果を左右する。
理性的でなく、感情が優先していて計算がなり立たない。7、8回交渉したのち、当事者納得できる条件がやっとのことで整理され、契約する準備ができた。

 交渉というよりも面談を多くとって、気持ちのふれ合いにつとめた。その人にとって最も良いと思われる選択肢を提供する。他方、購入者である紹介者にも正確な報告と提案をする。片方にとって、虫の良すぎる話は厳しく排斥する。いろんな要望を繰り返し聞き受け、説得して、また聞く。繰返し話し合う。忍耐強く誠意と熱意で説得する。真剣に。そして各人のために妥協点を探す。

 仲介は、双方のための調和を図ることで、片方の意思を通しきることとは違う。
当事者が譲り合うことにより合意につながるものであって、お互いが妥協し、あるときは譲歩する。弱みもあれば、強みもある。感情が先に来て理性が追いかける。経験や生い立ちが違う。そこには今までの人生が凝縮されて現われる。アナログ世界そのもの。相手を認めることなしに自分を認めてもらえない。個性の違いと現状を認める。
合意や妥結をはかるためには、結果にとらわれずに意見の違いを認め、進めかたそのものが重要、との認識で意思の疎通を図る。

 双方が納得して売買契約のはこびとなり、仲介人として印鑑を押すことができた。最初に声をかけてもらい、紹介してもらったおかげで仕事をすることができた。その結果、売主、買主両方から仲介手数料をいただき、感謝一杯の仲介業務をさせてもらった。

 このことが初めにあり、以後、10数年の間になんと、13回紹介してもらうことになった。同郷の四国から大阪に来た人、兄弟、姪御さんを始め、従兄弟や縁続きの方。赤大路町の自治会や消防の役員をしている関係もあって、広い付き合いのなかでの紹介があり、多数の友人・知人と縁を結ぶことができた。あるときは、奥さんの知り合いや仕事仲間にも声をかけてもらい、不動産を売ることや、買うことの仲介をすることができた。

 紹介者の期待と信頼感、その気持ちに裏打ちされた口コミと情報によって、新たに知ることができた人との良い縁、良い人間関係が広がっていくことになった。

 信頼・・・。信用してもらい、頼りにされる。誠実に仕事する。話したことを実行する。依頼されたことのプロセスと結果を説明する。誠実に実行してさらに信頼が増し、プロとしてさらに仕事をする。
信頼は仕事の親であり、安心の母であります。

 十数年前、自営独立のおりのモットーを、「信頼と安らぎに奉仕するアザマ住研」として営業してきたことをおもえば感慨無量の心境になる。

 知り合って以来、20年、いまもって、懇意にさせてもらっている。ありがたく、感謝するしだいであります。